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仕事の体験談  |

No5 デザイン

デザインの仕事で、大切なことは、機能美の一言に尽きます。

一つの物事を行うには、いろいろな方法があります。
でも、最も手間を掛けずに、なおかつ、最も自然な形で、物事が行われ、最大の効果を得ることができるように、これを追究することを探しだすのです。

具体的には、ある時、ある自動車メーカーから、新しく発売する自動車をどんな形にしたらよいか、の相談を受けました。

メーカーは、その自動車に、いろいろなメッセージをのせて、売り出したいと言っています。
それは、低燃費であること。そして、環境問題にも配慮しているということ、そして、主に若い女性や、小さな子供を育てている若いお母さん向けに売り出したいのだそうです。
大切な要素は、低燃費、環境問題、若い女性、そして若いママです。

これらの要素を、自動車というものに、付け加えていきます。

結局、若い女性や若いママが安心して、なおかつ、運転が楽しくなること、さらに、低燃費や環境問題ということから、車体全体の空気抵抗をする無くするために、ボディーを卵型として、そこからラフスケッチを重ねました。
最終的に、10種類ほどの検討案に絞り込み、メーカーへ持参しました。
大切なのは、なぜ、新しい自動車が卵の形なのか、機能面からもその方が良いのだ、ということを説得します。

単に、若い女性に受けがよさそうだから、ではなく、典型的な若い女性の行動パターンから、新しい自動車が、その人たちにとって良いツールとなりえる、という根拠を説明するのです。

メーカーは、提出した案のうち、2~3種類の案を、社内会議の資料として、検討することを約束しました。

数日後、そのうちの一つが、採用されることになり、さらなる打ち合わせをしたい旨の連絡がありました。
「当社が新しい自動車で訴求したいコンセプトを、最も理解して、案を提出してくれたから」というのが理由だそうです。

やりがいを覚え、良かったなあ、と思うのは、この言葉をいただいたときです。

一人善がりではなく、みんなが考えていることと、自分のデザイナーとして感性が、クライアントさんと同じ方向を向いていたのだ、と思うからです。
それだけ、相手に寄り添えることができたのですから。

デザインの仕事は、工夫、発想も大切です。
でも、クライアントの意図するところを具体化し、それを受け入れてくれたということが、一番大切なんだと思っています。

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